海洋教育は日本の未来を支える学校教育のテーマです。
2007年4月に制定された「海洋基本法」の第28条「海洋に関する国民の理解の増進等」において、「国民が海洋についての理解と関心を深めることができるよう、学校教育及び社会教育における海洋に関する教育の推進等のために必要な措置を講ずるとともに、大学等においても海洋に関する政策課題に対応できる人材育成を図る」ことが定めらました。
これを受けて「初等教育における海洋教育の普及推進に関する研究会」によって、日本の海洋教育が定義づけられました。
人類は、海洋から多大な恩恵を受けるとともに、海洋環境に少なからぬ影響を与えており、海洋と人類の共生は国民的な重要課題となっています。海洋教育は、海洋と人間の関係についての国民の理解を深めるとともに、海洋環境の保全を図りつつ国際的な理解に立った平和的かつ持続可能な海洋の開発と利用を可能とする知識、技能、思考力、判断力、表現力を有する人材の育成を目指しています。 この目的を達成するために、海洋教育は、海に親しみ、海を知り、海を守り、海を利用する学習を推進します。
・海洋政策研究所のウェブサイト
・海洋政策研究所による『海洋教育の普及促進に関する提言』
海洋教育という分野を推進するにあたっては、これまで日本財団を中心に様々な機関や団体により研究され、体系化されてきました。
01.
東京大学海洋アライアンス
海洋教育促進研究センター
この研究センターは、「海洋教育」という新しい教育実践の研究・普及を目的として、公益財団法人日本財団の助成のもと、2019年に教育学研究科に新設された附属センターです。
「海洋教育」は、「海とともに生きる」こと(海との共生)を基礎理念とする、初等・中等教育段階における海洋に関する教育です。それは子どもたち、そして私たちが「海とともに生きる」ために「海と親しみ、海を知る」ことであり、そこで得られる知識技能、思考力、判断力、表現力を用いて具体的に「海を守り、利用する」ことです。そこで、私たちは三つのキーワードを挙げることにしました。「環境・生命・安全」です。海洋は、私たちを支え、私たちが享受する環境であり、さまざまないのちがつながり、満ちる生命圏であるとともに、私たちすべての生存を左右するエレメントでもあります。海を利用活用するさいにも、何よりもまずそれを公共財(レス・プブリカ)として扱うべきであると考えます。こうした海洋教育は、私たちすべての希望を生みだすでしょう。
附属海洋教育センター センター長 大学院教育学研究科 教授 田中 智志
02.
新学習指導要領時代の海洋教育スタイルブック
海は地球上の水の97.5%をたたえ、水の循環の大本として地球環境を支え、わたしたちの生命維持に大きな役割を担っています。
新学習指導要領時代の海洋教育スタイルブック
地域と学校をつなぐ実践 (編・著/東京大学海洋アライアンス海洋教育促進研究センター)
東京大学大学院教育学研究科附属
海洋教育センター特任講師・田口康大氏による本書解説
四方を海に囲まれた日本は、海から様々な恩恵を受け、海と深いかかわりを持って生活を営んできましたが、次世代を担う子どもたちへの教育、義務教育において海の教育はほとんど行われていません。
海は地球上の水の97.5%をたたえ、水の循環の大本として地球環境を支え、わたしたちの生命維持に大きな役割を担っています。海は多様な生物やエネルギー、鉱物などの天然資源の確保の場でもあり、レジャーや癒やしの場でもあります。
一方、2011年の東日本大震災による予想を超える津波は、多くの人命と地域社会を奪い、海洋環境に大きな被害をもたらすなど、脅威をもたらしました。恵みとともに恐れをもたらす海について十分に認識し、共生する社会をつくっていくことが大事です。そのような状況を背景に、2016年の海の日に日本政府は、2025年までに全国の市区町村にて海洋教育を実施することを目指すと宣言しました。
東京大学海洋アライアンス海洋教育促進研究センターは、2019年3月31日で活動を終了し、「東京大学大学院教育学研究科附属海洋教育センター」が、引き続き海洋教育に関する研究・実践活動を行っています。オフィシャルサイトはこちら。
03.
海洋教育の4つのキーワード
海洋教育は、「海に親しむ」ことから始まり、「海を知る」ことで海への関心を高め、さらに海と人との共生のために「海を利用」しながら「海を守る」ことの大切さを学ぶものです。
日本財団、東京大学海洋教育センター、笹川平和財団とが連携して実施し、海の学びに取り組もうとする学校や先生の活動を助成する「海洋教育パイオニアスクールプログラム」によれば海洋教育を学ぶ上で特徴となるキーワードを4点あげています。
キーワード. 01
海に親しむ
海の豊かな自然や身近な地域社会の中での様々な体験活動を通して、海に対する豊かな感受性や海に対する関心等を培い、海の自然に親しみ、海に進んで関わろうとする児童を育成する。
キーワード. 02
海を知る
海の自然や資源、人との深い関わりについて関心を持ち、進んで調べようとする児童を育成する。
キーワード. 03
海を守る
海の環境について調べる活動やその保全活動等の体験を通して、海の環境保全に主体的に関わろうとする児童を育成する。
キーワード. 04
海を利用する
水産物や資源、船舶を用いた人や物の輸送、また海を通した世界の人々との結び付きについて理解し、それらを持続的に利用することの大切さを理解できる児童を育成する。
04.
海と日本プロジェクト
「海と人と人をつなぐ。」
日本財団が推進する、海と日本PROJECTとは?
さまざまなかたちで日本人の暮らしを支え、ときに心の安らぎやワクワク、ひらめきを与えてくれる海。そんな海で進行している環境の悪化などの現状を、子供たちをはじめ全国の人たちが「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、日本財団、総合海洋政策本部、国土交通省の旗振りのもと、オールジャパンで推進するプロジェクトです。
(海と日本PROJECTのウェブサイトより転載。)
日本財団 「海と日本プロジェクト」 公式PV 【活動紹介編】
●浜田市の
海洋教育への
取り組み
浜田市は、ふるさと教育の「教」の字を「郷里」の「郷」の字に置き換えた「郷育」という言葉を用いて、「ふるさと郷育(きょういく)」を推進し、子どもたちに、ふるさとに愛着や誇りを持たせ、将来地元で働きたい、地元に住みたい、市外からも浜田市を支援したい、という気持ちを育てるため「浜田市ふるさと郷育推進方針」を平成27年1月に策定しました。
社会教育(公民館)及び学校教育において自然体験活動やキャリア教育を充実させる
浜田市の宝である「海」をとおして自然体験活動や親子活動の実施し、学校教育(授業)の中で、浜田市の全ての子どもが自然体験を通じて浜田市の「海」を知ることに力を入れていきたいと考えています。
浜田市が行った 【はまだマリン郷育プロジェクト】2016-2017
●SDGsの普及とともに
注目される海洋教育
”これまでは地域に身近な海を対象とすることが多かった海洋教育は、世界的にも求められはじめています。国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」では、2030年までの国際目標として「持続可能な開発目標(SDGs)」が示されました。17の目標のうち、ターゲット14として「海の豊かさを守ろう」という目標が掲げられています。地球温暖化や海面上昇、海洋ゴミなど、地球規模で取り組まなければいけない課題が多くあります。海洋教育はこれらの課題解決のためにも求められています。
・海洋教育センター特任講師・田口康大氏の主宰する一般社団法人「3710Lab」サイトより引用。
・画像データはhttps://www.globalgoals.org/より使用。